蓮 唐音レン[蓮房は蜂に似ている。それでこう名づける。また略して波須という] 『本草綱目』果部蔬類蓮寓[釈名・集解]に次のようにいう。
蓮は子から生育するものは発育が遅く、藕芽〔蓮根〕から生え出るものは発育が早い。芽は泥を穿って入り、白蒻となる。つまり、わかね(草冠+密)である。長いものは一丈余。五・六月の嫩いとき、水にもぐってこれを取り、蔬菜として食べる。俗に藕糸菜という。節に二茎が出る。一つは藕荷〔浮葉〕となり、その葉は水に貼く。その下に横行して藕が成長する。一つは(草冠+支)荷〔立葉〕となり、その葉は水から出て、その旁の茎に花が生じる。葉は清明(二十四気の今の四月五、六日ころ)ののちに生え出る。六、七月に花が開くが、花には紅・白・粉紅の三色がある。花のまだ開かないものを、かんたん(草冠+函、草冠+〓)といい、すでに開いたものは、芙きょ(草冠+渠)「芙蓉・水華」という。
花の心には黄色の鬚があって、蕊の長さは一寸余。鬚の内がつまり蓮である。花がほころびると房を連ねて、はすのみ(草冠+荷 蓮実である)がなる。蓮の実が房にある様子はちょうど蜂の子が巣にあるのと似ている。六、七月に嫩いものを採って生で食べると脆くて美味である。秋になると房は枯れ、子は黒く石のように堅くなる。八、九月にこれを収取し、黒殻を斫取る。これを蓮肉という。冬月から春にかけて藕を掘り、これを食べる。 大抵、野生のものと紅花のものは蓮が多く藕はよくない。種植えのものと白いろのものは蓮は少なく藕は佳い。花白いものは香りよく、紅のものは艶である。千葉のものは実を結ばない。茎を荷という。茎は葉を背負っているので、負荷の意味をとってこういうのである。蓮の実の中の青い心二、三分を、苦(草冠+意)という。荷梗で穴を塞ぐと鼠は近づかなくなる。荷の煎湯で鑞垢を洗うと新品同然になる。物性によってこうなるのである。(以下略) 続いて蓮肉・藕・荷葉・蓮花の項目があるが、『本草綱目』『古今医統』『山海経』からの引用である。島田勇雄、竹島淳夫、樋口元己訳注『和漢三才図会』 平凡社 1994年第3版より。