「蓮花図」(はすはなず) 

宮本百合子〔(みやもと ゆりこ)1899年(明治24年)-1951年(昭和26年) 作家、評論家〕の随筆に次の「蓮花図」があるので、冒頭の部分を投稿する。興味ある人は続きを見てください。

「志賀直哉氏編、座右宝の中に、除熙(じょき)の作と伝えられている蓮花図がある。蓮池に白鷺が遊んでいるところを描いたものだが、花をつけた蓮に比べて白鷺が大変小さく描かれている。いかにも大きく古き蓮池に霊のような白鷺の遊ぶ趣が幽婉(ゆうえん)に捕らえられている。蓮花の茎が入り乱れて抽(ぬきん)でている下に鷺を配したところも凡手でなく、一種重厚な、美を貫く生の凄さに似たものさえ、その時代のついた画面から漂って来るのだ。

 この絵から私は強い印象を受け、こうやって書いていても黝(くろず)んだ蓮の折れ葉の下に戦(そよ)ぐ鷺の頸(くび)の白い羽毛を感じる。……その絵の中に1本の蓼(たで)がある。蓮の中から高く空中に花を咲かせている。不思議な奥深い寂寞(せきばく)の感じは、動かぬその蓼の房花によって語られているかと思われる。ところが偶然その蓼の花を今年毎日眺め暮すことになった」。初出1927年(以下略)『宮本百合子全集』第9巻 (2001年 新日本出版)より。

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