花中の君子   蓮        水上静夫 (1922~ 中国文学者)

泥中よりの清廉の使者  蓮

蓮はインドが原産地であるということは、植物学の定説であるようである事実、インド上空を飛行機でとぶと、わが奈良県の五万に及ぶ沼地以上に、多くの沼沢池があり、そこに野生の蓮が群生しているといわれている。インドに興った仏教でも、蓮は釈迦の台座にあり、また、また、極楽の一つのシンボルでもある。わが国の蓮は中国からの輸入とされそれ以前のものと思われる化石も出てくる。いったい、植物の原産地を一か所に限定するのは、植物学界の習わしのようである。ところが、中国の古代植物を眺めていると、先泰時代にすでに「蓮」と「葦」に十箇以上の名称があったことが窺える。私は、中国の古代植物に興味を持ち始めたころ、かなりの困惑を感じたものである。そして、ダーウィン(1809~1882)の、『種の起源』の第二章の「疑わしい種」の項に、

  私は、もし自然状態にある動物または植物がきわめて人間に有用であるか、あるいは何かの原因で人間の注意をひくとき、その変種がほとんど普ねく記録されているという事実に吃驚した。

という考えを準用して処理している。中国の「葦」も「蓮」変種名ではないが、古代のそのように数多い関連の名称があるということは、それだけ有用度が高く、人びとに認識されていたからと思うからである。そこで、その各々の名称を眺めてみることにしよう。およそ、事物の古い名称を探ってみることほど面白いことはない。(続く) 『花は紅・柳は緑』八坂書房 1893年)より。

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