蓮の話 双頭蓮と蓮の曼荼羅   牧野富太郎(植物学者 1862~1957)

諸君は、諸処の池において「蓮」を見ましょう。その清浄にして特異なる傘状の大きな葉とその紅色もしくは白色の顕著なる花とは、一度これを見た人のけして忘るることのできぬほ立派なものであります。またその蓮根と呼ぶものを諸君は食事の時にときどき食するでしょう。その孔の通った奇異なる形状はこれまた諸氏の常に記憶するところのものでありましょう。

通常蓮根と呼んで食用に供する部分は、世人はこれを根だと思っておりますが、これは決して根ではありません、それならばこれがなんであるかと言えば、これは元来蓮の茎の先の方の肥大した一部分であります。この茎はすなわち蓮の本幹と枝とであってあたかもキュウリやナスビなどの幹と枝とに同じものです。このキュウリやナスビなどはその幹枝が空気中にありて上に向かい立っておりますが、蓮では幹枝が水底の泥中にあって横に匍匐(はふく)しているのです。ことごとく泥中や地中にある幹枝を学問上では根茎ともいえば地下茎とも言います。それゆえ通常常世人が称する蓮根なるものは学問上より言えば地下茎、一名根茎と言わねばなりません。また、蓮根を雅に言えば蓮藕また単に藕とも称えます。(以下略 続きに興味ある方は植物記を参照ください)『植物記』(桜井書店 1943年)、ちくま学芸文庫『植物記』。

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