日別アーカイブ: 2013年3月16日

芙蕖(はなはちす)幸田露伴

芙蕖(はなはちす)は花の中の王ともいふべくや。おのずから具はれる位高く、徳秀でたり。芬陀も好し。波頭摩も好し。香は遠くわたれど、巖柱、瑞香、薔薇などのように、さし逼りたるごときおもむき無く、色はすぐれて麗はしけれど、海棠、牡丹、芍薬などのやうに媚めき立てるかたにあらず。人の見るを許して人の狎(な)るゝを許さざる風情、またたぐい無く尊し。暁の星の光りの薄るゝ頃、靄霧たちこむる中に、開く音する、それと姿を見ざる内よりはや人をしてあこがれしむ。雲の峰たちまち崩れて風ざはざはと高き樹に騒ぎ、空黒くなるやがて夕立雨の一トしきり降り来るに、早くも花を閉じたる賢さ。大智の人の機に先だちて身をとりおき、變に臨みて悠々たるにも似たり。散り際も莟の時も好く、散りてののち一トひら二タひら漣漪(さざなみ)に身をまかせて動くとも動かざるとも無く水に浮かべるもおもしろし。花ばかりかは、葉の浮きたる、巻きたる、開き張りたる、破れ裂けたる、枯(から)び果てたる、皆良し。茄(くき)の緑なせる時、赭く黒める時、いづれ好からぬは無く、蜂の巣なせるものも見ておもむき無からず。此花のすずしげに咲き出でたるに長く打對ひ居れば、我が花を観る心地はせで、我が花に観らるゝ心地し、かへりみてさまざまの汚れを帯びたる、我が身甲斐無く口惜きをおぼゆ。この花をめずるに堪ふべき人、そも人の世にいくたりかあらん。『露伴全集 第29巻』昭和54年第3刷 岩波書店)より

 

 

 

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「釘隠し」くぎかくし

長押(なげし)などに打った釘の頭を隠すための金属や木製の飾り。

釘隠しとは、伝統的な寺社建築やお城、書院造りの長押(なげし)の釘の頭を隠す飾り金具をいう。長押(なげし)の表面から柱に釘を打った場合に、表面に出る釘の頭を隠すために、釘の上にかぶせる装飾品です。材質は、鉄、銅、木、陶器などが用いられ、六葉(ろくよう)形のもの、兎形のもの、富士形のものなど多数の形状のものがあります。釘隠しは、江戸時代に多用されていました。釘隠しは、「釘覆い」、「釘隠し金具」とも呼ばれています。

蓮文様の釘隠しは非常に珍しいです。現在では、福井県南越前町の「花蓮公園」内にある、「爪生の館」の室内で見ることができます。(『行田蓮』p37「釘かくし」参照)、図版の制作年代不詳、75ミリ×60ミリ。

釘隠し

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