カテゴリー別アーカイブ: 蓮学文献解題

「絵巻物」に描かれた蓮

  • 「絵巻物」・「絵巻」とは、巻子装の絵画作品の意であるが、日本美術史用語における「絵巻物」とは、日本で制作された、主として大和絵様式の作品を指すのが通常であり、さらに範囲を限定して、平安時代から室町時代の作品に限って「絵巻物」と呼ぶ場合もある。中国で制作された同様の装丁の絵画作品は「画巻」「図巻」等と呼ぶのが普通である。巻子本は中国、朝鮮半島、日本などの東アジアにおいて盛んに作られたほか、古代エジプトなどにも例がある。

日本では平安時代前期~中期にも多くの物語絵が制作されたことが推測されるが、9世紀 – 11世紀までの絵巻物作品の現存するものはない。一般に「四大絵巻」と称される『源氏物語絵巻』『伴大納言絵巻』『信貴山縁起』『鳥獣人物戯画』はいずれも平安時代末期、12世紀の作と考証されている。これらの作品は、現存する絵巻物の最古の作品群であるとともに、芸術的にももっとも高く評価されている。

管見ですが下記の「絵巻物」に蓮が描かれている。

国宝八巻 承永本   京都・北野天満宮蔵)。国宝『一遍上絵伝』(十二巻 正安元年<1299> 京都・歓喜光寺蔵)。国宝『玄奘三蔵絵』(法相宗秘事絵巻 十二巻 藤田美術館蔵)。国宝『当麻曼荼羅縁起』(二巻神奈川・光明寺蔵)。国宝『鳥獣人物戯画巻』(四巻 十三世紀 高山寺蔵)。重文『弘法大師行状絵巻』(十二巻 教王護国寺)。『聖徳太子絵伝』(鎌倉時代 茨城・上宮寺蔵)。重文『長谷寺縁起絵巻』(三巻 十四世紀 出光美術館)。重文『浄土五祖絵巻』(嘉元三年<1303>神奈川・光明寺蔵)。重文『地獄極楽図』(京都・金戒光明寺)。『融通念仏縁起』(奈良・徳融寺蔵)。『浄瑠璃絵巻』(三巻 室町時代 サントリー美術館蔵)。図は『北野天神縁起』より。

北野天神縁起

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「奈良絵本」のなかに蓮

奈良絵本とは、挿絵入りで書写された御伽草子である。御伽草子とは、縦16cm,横約22cmほどの横本(よこほん)の体裁をなし,室町時代から江戸時代前期に流行した短編の物語集である。現在のところ、約400編の作品が現存している。作者はほとんど不明である。それらの中には、「浦島太郎」や「一寸法師」等、今日まで読み継がれている作品もある。

絵本は、その初期において識字率の低い大衆に内容を理解させるという性質も強かったと考えられる。こと宗教の布教において説話や抽象的概念を絵図で示すことは世界各地にその類型がみられ、神話や伝説なども絵図入りの書物の形で示されたものも数多い。日本における絵本は、平安時代の絵巻物を起源とし、室町時代の奈良絵本、江戸時代の草双紙と歴史をたどることができる。本図は江戸時代初期に描かれた奈良絵本の断簡。

D-1 万葉集

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続日本紀(しょくにほんぎ)

『続日本紀』は、平安時代初期に編纂された勅撰史書。『日本書紀』に続く六国史の第二にあたる。菅野真道らが延暦16年(797年)に完成した。文武天皇元年(697年)から桓武天皇の延暦10年(791年)まで95年間の歴史を扱い、全40巻から成る。奈良時代の基本史料である。編年体、漢文表記である。

同書の光仁帝 宝亀六年(775)8月12日の条に、「始設蓮葉(はちすば)之宴」(始めて蓮の葉を観賞する宴を催す)  とある。これはわが国で初めて開催された観蓮会と解釈されている。また、『類聚国史』の延暦12年(792)8月7日条に、「8月ぼ癸丑、翫蓮葉宴飲、奏楽賜祿」(蓮の葉を翫びて宴飲し、楽を奏して祿を賜う)とあり、中国で行われていた、観蓮の宴が伝わったと思われる。

「観蓮会」は、盛夏の早朝の涼しい時間に、友人や知人を誘って蓮の香りをきき、美しい蓮を見ながら、蓮酒やお菓子を食べながら歓談をする行事です。図は1930年頃の中国・北京での観蓮会風景。『北京風俗図誌』(1986年 平凡社)より

北京観蓮会2

 

 

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江源日記

『江源日記』

滋賀県守山市の田中家には、応長元年1311ー天文23年(1554)までの六角佐々木家の歴史を記録した日記『江源日記』がある。この日記は江戸時代に田中家の先祖が筆写したもので、原本は誰が所有していたかは不明です。

この日記の「巻六下」に「妙蓮」(花托のない花弁だけの花)のことが、次のように記されています。

応永13年(1406)7月、田中左衛門尉頼久、9顆駢蔕蓮(妙蓮)ヲ献上ス。満高珍華ナリトテ、北山殿ヘ献セラル。道義公(足利義満)珍華ナリト賞セラレ、古記ヲ考シメ玉フニ(後略)とあり、十六代当主の田中頼久が、前将軍足利義満に珍しい品種の蓮の花が咲いたので、「妙蓮」を献上したことが記されている。

妙蓮はいつ中国から将来されたかは不明であるが、品種が同定出来る、わが国最初の花蓮である。以来、今日まで伝承されている蓮です。

江源日記

 

 

 

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万葉集(まんようしゅう)

奈良時代の歌集。(629ー759年頃成立?)。20巻。

 万葉集には、短歌・長歌・旋頭歌(せどうか)・仏足石歌・連歌が詠まれていて、その数は約4500余首が載っている。わが国でもっと古く花蓮を詠んだ、次の、長歌一首、和歌三首の四首が載っている。

  御佩(みあかし)を 剣の池の 蓮葉(はちすば)に 渟れる水の 行方無み わがする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寝そと 母聞せども わが情(こころ)清隅(きよすみ)の池の 池の底 われは忘れじ ただに逢ふでに (巻第十三 三二八九)

         荷葉(はつすば)を詠む歌   長忌寸意吉麿

  蓮葉(はちすば)は かくこそあるもの 意吉麿(おきまろ) 家にあるものは

   芋(うも)の葉にあらじ              (巻第十六、三八二六)

         新田部親王に獻れる歌一首

  勝間田の 池はわれ知る 蓮無し 然(しか)言ふ君が 髭無き如し

                           (巻第十六、三八三五)

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 渟(たま)れる水の 玉に似たる見む

                                                                                                           (巻第十六、三八三七)

以上の四首で、この時代の花蓮の観賞は、仏教の影響がなく、花より葉に転がる露を愛でる和歌が多い。

2解題

 

 

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古事記

『古事記』(こじき)。

上巻1~7、中巻1~6、下巻1~4。 元本は現存しない。幾つかの写本が伝わる。

第一に記さねばならないのは、『古事記』であろう。日本最古の歴史書で、成立年代は、写本の序によれば712年(和銅5年)に太朝大臣安萬侶(おほのあそみやすまろ)、太安万侶(おほのやすまろ)によって、献上された。2012年は『古事記』成立から1300年に当たり、いろいろな記念行事が各地で行われた。

下巻3巻の「雄略天皇」の項に、

「久佐迦延能 伊理延能波知須 波那婆知須 微能佐加理毘登 登母志岐呂加母」

日下江(くさかえ)の 入江の蓮(はちす) 花蓮(はなはちす)

身の盛り人 羨(とも)しきろかも(歌謡番号96)

の和歌が載っている。

この「波知須(はちす)=蓮(はちす)=花蓮(はなはちす)」が、わが国の文献上では「蓮」の初出と言われている。

古事記

 

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