カテゴリー別アーカイブ: 蓮の豆知識

メシベとハスの実の話

ハスの花の中心には、海綿質で出来ている円錐形の花托(かたく)がある。
花托にはメシベである心皮が入っていて、黄色い柱頭だけが外にでていて、昆虫がオシベの花粉を運び、受粉する。

受粉前1↑ 通常の花托。
オシベの香りに誘われてミツバチがきているが、受粉前なので、柱頭は黄色い。
オシベも整然と並んでいる。

 

受粉後2


受粉後。柱頭が黒ずみ、オシベも乱れている。香りもあまりしなくなる。
左は花弁が散って間もない花托。

 

ハスの実1


花弁が散ってから約3週間の間に果托は成長し、実は食べごろになるが、もっと早く食べても、甘くて美味しい。カンボジアの子どもたちは、まだ花弁がついているままの花托の実をとりだして食べていたので、私も真似をしてみたら、とても甘かった。
近代茶人・原三渓も、1週間目くらいのハスの実は美味であると言っている。

 

闢ョ9譛・0116
スポンジ状の果托には、成熟したハスの実が育っている。この実は、外皮と薄皮を剥いて生のまま食べることが出来、晩夏から初秋だけに味わえる。

果托とハスの実


秋になると外皮も実も固くなり、剥いてたべるのは困難になる。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA


晩秋の果托。茎も枯れて折れ曲がり、ハスの実を田圃に落とす。
ハスの実は非常に固いので、自然に発芽することは滅多に無いが、稀に発芽すること
もある。埼玉県行田市の行田蓮(古代蓮)は自然発芽である。

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー: 蓮の植物学 | メシベとハスの実の話 はコメントを受け付けていません。

ベトナムの蓮「実生栽培記録3」

昼間は相変わらず暑いですが、朝晩は少し涼しさを感じるようになりました。
ベトナム南部の蓮は元気に育っています。

8月23日2014
鉢栽培なので、中央に植えた種は鉢の周りに向かって伸長しているのが分かります。田んぼや池では、真っ直ぐ、そして節が出来るとそこからどんどん枝分かれしていきますが、鉢なので鉢の壁にぶつかってグルグルと回り込んで成長していくのです。
小さいですが立ち葉もあがっているので、順調に成長しているようです。今年は花は咲きません。秋になるこれからは葉も枯れ始めます。そして地中の地下茎(蓮根)の一部が肥大化し、栄養(主に澱粉質)を蓄えながら、来春まで休眠状態に入ります。

葉がまだ緑なので、あと一回くらい施肥をします。春から夏はリン酸が多めのものでしたが、この時期の肥料はチッソ・リン酸・カリの割合が(出来れば)カリが多めのものが良いかと思います。カリは根を育てる役目なので。もちろんこれまで使っていた肥料でも大丈夫です。

このまま秋冬を越し、来年3月末になったら掘りだして、もっと大きな鉢に植え替えます。このベトナム・ミ―ホア村の蓮の花は、一重でピンクの大型種でしたから、きっと大きな鉢で育てた方が良いでしょう。来年が楽しみです。

カテゴリー: 蓮の豆知識 | ベトナムの蓮「実生栽培記録3」 はコメントを受け付けていません。

双頭蓮

「そうとうれん」と読みます。町田市大賀藕絲館の約1万ヘクタールの蓮田で一本だけ咲いていました。「双頭蓮」という品種ではなく、突然変異による一種の奇形腫で、通常の蓮が一本の茎の先端に背中合わせに咲いたものです。
この双頭蓮の種蓮根を植えても同じ花は咲きませんし、実生で育てても咲きません。中国では吉祥の蓮として大変珍重され、喜ばれます。7月27日の双頭蓮1日目です。

2014年7月27日1

蓮文化研究家・三浦功大(故)の著書『蓮への招待』には双頭蓮の記述項目が6カ所あり、上記に中国では吉祥の花として喜ばれている、と書きましたが、日本でも仏教伝来以前の出来事を記述した『日本書記』巻二三、二四には、双頭蓮の記述が残っている、とあります。以下、同著からの一部引用です。

皇明帝七年(535)秋七月。是の月に瑞蓮、剣池に生いたり、一茎に二花の花あり。
皇極天皇三年六月(644)剣ノ池の中に、一つの茎に二つの蕚ある者あり、富浦大臣、妄に推していわく、「これ蘇我臣の栄むとする瑞(みつ)なり」といふ、即ち金の墨を以て書きて、大法興寺の丈六の仏に献る。

2014年7月29日双頭蓮2
3日目の双頭蓮です。色も大分退色してきました。

 

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 双頭蓮 はコメントを受け付けていません。

「象鼻杯」の不思議

蓮の葉の茎を切り取ると樹液のような白い汁がでてきます。樹液の中には甘いものもありますが、花柄、葉柄から出るこの汁はとても苦く、蓮心の苦みと共通する苦さです。

象鼻杯 葉柄から出る樹液

オーストラリアの原住民はこの知るを腹痛や解熱の薬にしているそうですが、細菌、真菌(カビ)繁殖を防ぐ成分が含まれています。茎をとおしてお酒を飲む象鼻杯は、お酒の味が清涼感のあるものになる、と言われる由縁はこの樹液にあるのかもしれません。

荷鼻2

蓮の葉の中心、荷鼻です。葉と茎の連結部分で、二酸化炭素を取り込んで酸素を放出するガス交換のいわば関所のような役目をしています。

荷鼻に穴をあける
金属製の簪は固い荷鼻の穴あけに、とても開けやすかったです。2か所だと吸いこみにくいので3カ所が丁度良いようです。

象鼻杯 酒を注ぐ

象鼻杯 注がれた酒
今年は「象鼻杯」「荷葉杯」で暑気払いを是非なさってください。

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 「象鼻杯」の不思議 はコメントを受け付けていません。

「象鼻杯」は優雅にたのしみましょう。

「象鼻杯」には他にもいくつか呼び名があります。
「碧筩杯」(へきとうはい)。「荷葉杯」(かようはい)荷は中国語で蓮のこと。「碧芳酒」「蓮華杯」「解語杯」など。

用意するもの。
①直径が40~50㎝の緑が濃く、しっかりとした葉を選び、茎は60㎝位の長さに切ります。葉を支える腕の長さより長くしないこと。
②清酒(飲めない人は水)。お茶、ジュースなど色のついたものは葉の上でコロコロと転がる玉の露の雰囲気がたのしめず、優雅さに欠けます。
③お酒または水をいれる注器。
④蓮の葉と茎の連結部(荷鼻―通称ヘソ)に穴をあける簪。(竹串)

「象鼻杯」を優雅にたのしむには、お酒を注ぐ人と飲む人(客人)の二人で行います。
①客人は葉と茎の付け根を人差し指と中指で挟み、掌を広げて葉を支えるように持ち、茎を口に含む。茎の付け根を無理に曲げると折れてしまうので、茎の中ほどをそっと上に曲げるようにする。葉は必ず目よりも常に下に持つこと。
②蓮の葉の荷鼻に3カ所穴をあける。穴が茎より外れないよう、心もち内側に向けてあける。
③もてなす人は、そっと酒を注ぐ。
④客人はゆっくりと葉を回し、葉の中の酒が露のように光り輝きながら転がるのをたのしんでから、酒を吸う。蓮の茎には一種の樹液があるが、それが酒とまじわると蓮の香気となり、酒の味が変わる。
蓮の葉は決して上に持ち上げないこと。

「象鼻杯」は、蓮の葉でお酒を飲むだけが目的ではなく、葉の露を転がしてたのしみながら、蓮の花を愛で、俳句、短歌、詩などを詠むと一層趣ある行事になります。

お酒を注ぐ道具いくつか

象鼻杯道具1

象鼻杯道具2

象鼻杯道具3

蓮の葉の荷鼻に穴をあける簪

象鼻杯道具4

上野不忍池で

象鼻杯1不忍池2014

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 「象鼻杯」は優雅にたのしみましょう。 はコメントを受け付けていません。

蓮とミツバチと花粉

美剣士(5日目!)と蜀紅蓮(2日目)に明け方からミツバチがやってきました。近くにいらっしゃる元玉川大学教授で農学博士の松香光男さんが飼っているミツバチです。蓮には蜜はあまりありませんが、花粉を目当てに飛んでくるのです。

20146月30日美剣士とミツバチ

 

6月30日蜀紅蓮1

花粉を採るのに夢中なので5㎝位近くまで寄ってカメラを向けても気づきません。

ミツバチと花粉1

脚の両脇についているオレンジ色の花粉団子が見えますか?お尻にも花粉がいっぱい!

ミツバチと花粉2

こちらは雄しべの中を転げまわって花粉をあつめています。
花粉にはタンパク質、アミノ酸、ビタミン、脂質、ミネラルなどが含まれています。花粉は生きている細胞なので、女王蜂や幼虫の餌になります。
この花粉を中国やベトナムでは顆粒状に加工し、サプリメントとして売っています。

花粉瓶詰め

上は上海土産で、蓮の花粉100%です。さすが蓮の国、中国ですね。
ベトナム南部ではコーヒーの花粉を売っていました。男性通訳の方から聞いた飲み方。
カップに蜂蜜を入れ、好きなお茶(紅茶、ウーロン茶など)を注ぎライムやレモンをしぼり、花粉をスプーン一杯くらい入れて飲むと、疲れがとれて元気になるそうです。

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 蓮とミツバチと花粉 はコメントを受け付けていません。

今年は実生栽培に挑戦2

「今年は実生栽培に挑戦/」植えつけ15日後です。

2粒とも無事に浮葉が出ました。細い細い頼りないような茎です。元肥をしなかったので、今日ほんの少しだけパラパラと施肥をしてみました。‎

ミ―ホァ村実生2粒5月22日施肥1

この種はベトナム南部メコンデルタ地帯のドンタップ省タップムイ県ミ―ホァ村の蓮田の種です。ピンクの一重ですが、実生の場合は同じものが咲くとは限りません。
一年中暑い地域で咲く蓮なので、果たして日本の冬が越せるか?が一番の課題です。

発芽までの記事は5月7日の「蓮の豆知識」をご覧ください。

 

 

 

 

 

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 今年は実生栽培に挑戦2 はコメントを受け付けていません。

今年は実生栽培に挑戦

蓮の花を咲かせる方法については1年前の2013年4月15日「蓮の豆知識―実生から花蓮をそだてる」と言う記事があります。
昨年の記事では「葉が2、3枚出たら植えつける」と書かれていますが、発芽して日をおかずに植えつけたらどうなるかしら?と思い挑戦してみました。

種の成熟度を確かめる

種を水に入れ、底に沈んだものだけを使います。水に浮かんでいるものは未成熟なので発芽しません。

発芽処理

20145月7日実生発芽

4月29日にニッパーで種の平らな部分を切り取り、ガラスコップに水を入れ日の当る窓辺に置いて5日目から発芽が始まりました。
この写真は水に入れてから8日目の状態です。
同じコップに入れましたが、種によって発芽状況に差があります。
蓮の種の殻は非常に硬いので、発芽を促すために、ニッパー、ペンチ、花鋏、やすりなどで傷をつけます。丸くて滑りやすいのでくれぐれも注意してください。

20145月7日実生植え付け

実生用の土は荒木田土7黒土3の混合にしてみました。まだ幼い芽なので肥料は入れません。土の表面から5~6㎝位中に、そっと沈めました。水を張り、日当たりの良いところに置きます。

20145月7日実生植え付け2

春に種蓮根を植えつけると夏には花が咲きますが、実生の場合は今夏は咲かないこともあるようです。来春、掘りだして良い種蓮根が出来ていたら植えつけ直せば、夏には咲くでしょう。この実生の鉢、どうなるでしょうか?ちょっと楽しみです。

実生の場合は親と同じ色、姿の花が咲くとは限りませんが、種から花を咲かせる達成感があります。品種名にこだわらなければ、挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 今年は実生栽培に挑戦 はコメントを受け付けていません。

屈原

6月12日は旧暦5月5日、中国戦国時代・楚の詩人、屈原(紀元前340―278)の命日です。屈原は貴族出身で臣として懐王に仕えましたが、讒言により二度追放され、自分の思いが王に理解されない悔しさに絶望して汨羅江(べきらこう)に身を投げ60歳で亡くなりました。最初に追放された30歳の頃の詩「離騒」は、屈原の代表作で、中に蓮がでてきます。

製芰荷以為衣兮  芰荷(きか)を製(た)ちて以て衣と為し
集芙蓉以為裳   芙蓉を集めて以って衣裳と為す
不吾知其亦巳兮  吾を知らざるもの其れ亦巳(や)まん
苟余情其信芳   苟(まこと)に余が情其れ信(まこと)に芳し
芰(ヒシ)と荷(蓮の葉)を裁って衣とし、芙蓉(蓮の花)を集めて裳裾とする。私の
値打ちを知る者がなくても、それは仕方がない。そんなことに関係なく本当にわが心持
こそ、実に芳しいのである。

またそのうちのひとつ「九歌」に、湘水の女神の湘夫人が男神を慕って唱う歌があり、ここにも蓮が出てきます。

築室兮水中 室を水中に築き
葺之兮荷蓋 之に荷蓋を葺く(奥部屋を水中に築き、その屋根を蓮の葉で葺く)

孤高の詩人、憂国の詩人と言われた屈原の詩の流れは近代につづき、中国の文学者・歴史学者・政治家で日本にも縁の深い郭沫若(1892-1978)が戯曲にし、それを前進座の河原崎長十郎が初めて演じたのは1962年のことでした。大学生だった私はこの芝居を観ていますが、まだ蓮に関心がなかったので、長十郎演じる屈原が「離騒」や「九歌」を謡ったのかどうか覚えていないのが、今ではとても残念に思います。

 

 

 

 

カテゴリー: 蓮の豆知識 | 屈原 はコメントを受け付けていません。

蓮の葉の撥水性(はっすいせい)と毛茸(もうじょう)

関東も今年は早々と梅雨に入りました。梅雨は気分がすぐれませんが、一度小雨の蓮田を覗いてみてください。蓮の葉に溜まる水玉の動きが、非常に軽やかで見ているだけで楽しいです。蓮の葉の表面は10マイクロメートルほどの長さで、頭が半球の突起で覆われています。この表面の突起のため、葉の表面には直接水が浸透せず、表面張力により撥水性とよばれ、水が集まり蓮の露と呼ばれる水滴になります。この水滴が微風によって葉の表面を転がる風情を、日本人は愛でてきました。

近年、この撥水性を応用して、ナノテク、薄膜技術、繊維などの分野での研究がさかんです。オリンピックの競泳の水着に応用されたのは記憶に新しいです。DSCN8717

カテゴリー: 蓮の植物学 | 蓮の葉の撥水性(はっすいせい)と毛茸(もうじょう) はコメントを受け付けていません。